学習塾の運営ポイントを現役の個別指導塾室長が解説
2023年11月3日 | お役立ち情報
学習塾には性別、年代、立場が違う人間が集まります。責任者に求められる役割は多岐に渡ります。
重要な時期、組織運営のポイントやさまざまなトラブルなどについて、現役の個別指導塾の室長である私がまとめました。少しでも参考になれば幸いです。
もくじ
学習塾の年間予定重要3選
学習塾の運営は日々の積み重ねです。しかし、年間予定の中でも特に重要な3つの期間があります。
新学年準備、夏・冬・春の期間講習、入試前後の3つです。
順番に解説します。
1.新学年準備
中学受験塾であれば2月が新学年のスタートです。新たに入塾する生徒が最も多い時期であり、既存生を放置しがちな時期です。それぞれに配慮した運営が必要な期間です。
新入生について
新入生は通塾に慣れるだけで精一杯の時期です。
新たに入塾した生徒は職員・講師・スタッフで共有し、宿題・課題のチェックの注意点や生徒状況をこまめに共有するようにしましょう。
可能な限り、入塾から1ヶ月間は生徒・保護者との接点を多く持ち、現状の共有とこれからの進み方、イメージを持ってもらうようにしましょう。「あなただけができていないわけではない」「今は慣れるための大切な期間」「みんな一緒」であるということを伝え、安心感を与えることが重要です。始めたばかりは特に保護者は焦り、前のめりになりがちだからです。
また、入塾してすぐの退塾は悪い口コミの始まり。反対に面倒見がいい、ちょっとした声掛けから生まれる安心感は、良質な口コミを発生させるチャンスでもあります。
既存生について
2月はもともと通っている生徒にとっても、冬期講習や入試期間、次の学年へどうしたらいいのか考える時期です。どうしても受験生に目が行きがちで、その他の学年は放置されがちな時期になります。ではどうしたらいいのでしょうか。新学年準備は一発勝負ではなく、年間計画で行っていけばよいのです。
あなたが担当している教室の退塾者の多いタイミングはいつですか?
多くの教室では秋口がピークになることが多いです。なぜなら、期間講習前や新学年などの節目によって、「このまま受験をしていいのか」と考え始めるからです。
だから、このタイミング前に面談や保護者会をしましょう。期間講習や新学年準備といった節目で生徒との接点を持てば継続確率が上がります。通っている生徒を辞めさせないことも安定した運営の大きな要素になります。
新学年準備で生徒が多く退塾してしまうのは、年間を通して問題を解消できなかったということになります。
2.夏・冬・春の期間講習
学習塾を運営していく上で、生徒数を確保は必須です。そのために新規生徒を獲得するポイントがあります。それは、夏・冬・春の講習期間です。
3回の期間講習を通して、満足していただく。その後、継続して通塾してもらうことが学習塾の安定的な運営・経営に直結します。反対に期間講習で生徒を獲得できなければ厳しいです。通塾に至らなかった原因を把握しなければならないですし、悪い口コミにつながりかねないからです。
期間講習がポイントになるのは、通常期と比較して生徒と接する時間が圧倒的に長いからです。基本的には連日、授業のため通塾します。過ごす時間が長いとともに、接触する回数が極端に多いのがこの期間になります。
生徒の様子や学習状況を把握しやすいです。子どもたちの情報を保護者に伝え、共有しましょう。保護者からの安心感、信頼感が増します。
講習期間は普段から通塾している生徒のサポートはもちろんですが、極力外部生に注力できるような環境を整えておくのが重要です。その為にも講師・スタッフとの連携を意識しましょう。
3.入試前後
学習塾である以上、通塾する生徒の希望する学校への合格進学は大きなミッションの一つです。入試前においては受験生を中心として対応がメインになります。
一方で受験学年以外の存在も忘れてはいけません。ある程度は受験生がいるので仕方がないと思われる一方で、「放置されている」「ないがしろにされている」と感じる生徒や保護者がいるのは事実。対応によっては進級前に他塾に移るということも発生します。
入試前は特にバランスが必要です。
入試終了後は速やかに結果を発信するようにしましょう。もちろん途中経過もキリのいいタイミングで発信するようにしましょう。
入試結果は次年度以降の生徒獲得のために重要なツールになります。
ただ、入試結果はいくら万全の準備をしても、思うような結果が出るわけではありません。
どのような結果であろうと、生徒の頑張りを塾としての取り組みをきちんと伝えられるようにしておきましょう。結果1つでも見せ方、伝え方で相手に与える印象は変わります。
塾をスムーズに運営するためのポイント
塾は責任者、講師、スタッフなど複数の人で構成されています。職員がいればアルバイトもいます。運営していく中で大切なポイントをまとめておきましょう。
1 責任者として重要なポイント
年間予定はとても1人では対応しきれません。
だから、教室運営、責任者として重要なポイントは業務を一人で抱え込まないこと、自分しか知らない情報を極力減らすことです。
教室の責任者は合格実績とともに、生徒数確保・売上・利益の拡大も重要な要素です。これらの両輪が回ってこそ、学習塾が発展していきます。
そのために、教室、校舎全体を1つのチームとして運営していくことが大切です。
何かあれば責任を取ることは当然です。しかし、講師・スタッフといった教室職員全員が当事者意識をもって動けるのがベストです。そのためにも、情報共有、マインドの浸透は非常に重要です。
2 講師・スタッフとの情報共有
講師・スタッフとの情報共有は教室校舎を安定運営させていくためにも重要です。
安定運営のために情報共有とコミュニケーションが大切です。
ここでいうコミュニケーションとは、生徒や保護者との話を指します。
日々多くの相談が教室校舎には寄せられます。それらを教室校舎として対応していくことが最も重要です。責任者と同じ感度で、同じ対応ができるようになることができれば、教室校舎は非常に安定します。そのために責任者がどのように考えているのか、どのように行動するのかを講師・スタッフが理解する必要があります。
その第一歩が情報共有です。全て共有することが難しいでしょう。しかし、優先順位の高いもの、放置・対応を誤ればクレームへとつながるものは必ず当事者全員に伝えましょう。教室に掲示するなどで周知徹底するようにしましょう。
状況の共有は講師・スタッフを守るためにも大切です。
3 講師・スタッフとの役割分担と責任の明確化
講師の役割は各科目の授業を行い、成績を上げる、生徒が希望する学校への合格進学を果たすことです。
ここ最近は集団授業であっても個別での対応を要求されるケースが多くなりました。全員に等しく対応することは当然難しいので、きちんと対応をしているという姿勢を見せるようにしましょう。その為にも情報の共有がカギです。
保護者から対応のお願いをされた際には、責任者だけではなく、該当する生徒を担当する講師やスタッフにも共有し、複数の人間から声をかけるようにしましょう。
もちろんその際も何かあった際の責任は責任者になります。どのような状況下であろうとも、責任者は教室で行ったことの全てに対しての責任があります。
4 講師・スタッフとの期日・約束事項の徹底
生徒・保護者との期日、約束事と同様に、講師・スタッフとの期日・約束事項の徹底を行いましょう。
責任者が率先をして約束を守るのが重要です。態度と姿勢で示せば、一定の緊張感が生まれるからです。
基本的に内部での期日・約束事項が守れない人は大切な生徒・保護者との期日や約束事項も破ります。また、期日や約束を破ったことを軽くとらえることが非常に多いです。
「なぜ、期日を守らないといけないのか」「なぜ、約束を守らないといけないのか」、生徒(子供たち)に伝えるのと同様に、何度も繰り返して理解するまで続けることが重要です。
5 業務分担
教室校舎を円滑に運営していくためには、講師・スタッフとの業務分担は欠かせません。
責任者はあくまでも全体を俯瞰的に見る、オーケストラであれば指揮者でなければなりません。その上で、講師やスタッフには役割を与え、業務分担を行いましょう。
この辺りの差配も責任者としての腕の見せ所です。特に、責任者が業務を抱えることなく、フリーな立場で立ち回ることができるように分担を行いましょう。
業務分担において最初は各自の得意分野から選んでもいいでしょうし、選択をさせてもいいと思います。ただし、責任者の視点で変更が必要であれば速やかに判断し、決断を下していきましょう。
塾運営でのトラブルと対応
塾を運営しているとさまざまなトラブルが起こります。生徒、保護者、スタッフなど代表的なものを知っておきましょう。
1 生徒間のトラブル
生徒間でのトラブルで一番多いものは些細ないざこざ。集団塾であれば20人程度のクラス編成で進めていくため、どうしても人間関係が生まれます。
- 他人の生徒結果を言いふらす
- クラスのアップダウンに伴ういざこざ
- 物、お金の貸し借り
などが代表的なトラブルです。
最近特に増えているのは、感情が抑えきれずに手を出してしまい、喧嘩に発展すること。最初は些細な言い合いだったものが、抑えきれずに手を出してしまう。また、塾の帰りに悪ふざけをして、喧嘩に発展、地域の方から連絡が入ることもあります。
どうしてもこれらのトラブルをゼロにするのは難しいでしょう。日頃の指導だけではなく、実際にトラブルが発生した際にいかに、早く解決に向けて行動するかです。
トラブルが発生した際には隠すのではなく、公にしましょう。当事者できちんと話し合い、解決の場を作ることが大切です。生徒間のトラブル対応も塾の評価につながります。
2 保護者とのトラブル
塾を運営していく上で必ずと言ってもいいほど起こるのが保護者とのトラブル。
その中で多いのは「言った、言わない」問題です。
特に面談や電話、普段のコミュニケーションでは証拠が残ることがないので、こういわれてしまうと塾側の立場は非常に弱いです。
また、受験期間中についていつも以上にナイーブになります。
普段であれば許されていた言葉、冗談も受け入れてもらうことができなくなります。
入試期間直前は特に言葉の選択に注意するようにしましょう。
3 講師・スタッフ間のトラブル
生徒・保護者ではなく、内々でもトラブルは起こるもの。特に講師間やスタッフ間でも様々な問題が起こります。
教務内容での相違でのいざこざ、互いに譲れるものがあるので調整が非常に難しい子もがあります。また、受験期が近くなると進路指導、併願について。ある先生はA中学校を進めるが、違う先生はA中学校を否定する。塾内での進路指導、教務指導の相違は通っている生徒・保護者にとっては混乱のもとなので注意が必要です。
教務指導や進路指導については校舎教室内で最低限の統一を図ることが必要になります。
トラブルの解決方法として一番は当事者同士できちんと面と向かって話をする。責任者が話し合いの場を作ることです。できれば早急に、問題が発生したら早めに対応するのが望ましいです。
その際にはどちらか片方に加担するのではなく、公平な立場で話を聞きましょう。お互いに納得できるようなクロージングができるとベストです。
まとめ
学習塾を運営するには、リーダーシップとマネジメント、両方の力が必要になります。
性別も年代も立場も違う人間が集まる学習塾において、責任者に求められる役割は多岐に渡ります。
- 講師スタッフの取りまとめ
- 生徒の学習指導
- 保護者への進路指導
- 普段の雑務など
だからこそやりがいのある仕事でもあります。
まずは1年間、大きな視点で運営・経営をしていくことを意識しましょう。
本記事が参考になれば幸いです。
関連記事