5つのデータ活用で塾講師の指導力を育てる!教え方のうまい講師は何が違うか?
2024年2月22日 | お役立ち情報
学習塾が顧客に提供する最大の価値は、第一志望の難関校に合格させること。
こう言い切ることにはさまざまなご意見があろうかと思います。しかし、今回はあえて「難関校への合格」ということに焦点を当て、教育者であり、経営者でもある私たちができることを考えたいと思います。
弊塾は今年度も一定の第一志望校・難関校の合格率をもって受験シーズンを終えることとなりました。
ひとえに厳しい受験期間を全力で駆け抜けた生徒と保護者のみなさまの努力の甲斐あってのことではあります。ただ、弊塾の講師一同、チームで日夜工夫を重ねて生徒一人ひとりと向き合ってきたことも少なからず貢献していると自負しています。
そこで、今回の記事では、「難関校への合格」を目標に「教え方のうまい講師」を育てるための方法について弊塾の取り組みをご紹介します。講師育成の全般的な話というより、多くの塾で腐心されているであろうデータの活用に焦点を当ててお話させていただきます。
塾の受験指導力向上に向けて、何か気づきとなることがあれば幸いです。
もくじ
1.学習塾の指導は科学実験と同じ
塾経営者のみなさまにとっては当たり前のことですが、学習塾の指導の考え方は科学実験と同じです。
ある特定の状態で特定の操作を行うと特定の結果が生じる――。あらゆる科学的知識はこうした形式をとります。
学習塾の指導も、下記のような因果仮説に基づいて展開されています。
- 【状態】こういう課題を抱えた生徒に
- 【操作】こういう指導を行えば
- ↓
- 【結果】こういう成果が現れる
科学実験においてデータが極めて重要な役割を担うことは言うまでもありません。
「水は100度で沸騰する」という簡単なことであっても、気圧や熱量、温度など、さまざまなデータを取得することによってはじめて、知識通りに正しく因果関係が成立しているかを評価できるからです。
2.「教え方のうまい講師」とは
このことに照らせば、難関校への受験を次々と成功させる「教え方のうまい講師」の条件は、以下の2つであると言えます。
- 豊富な指導知識を持ち、実践できること
- 現実を正確に評価できること
前者は言うまでもありませんが、後者については注意が必要です。なぜなら十分に意識しなければ、優れた講師であっても罠に陥りかねないからです。
たとえば、「計算の速度が遅く、時間内に問題が解ききれない」という課題をもった生徒がいたとします。
そこで、計算速度アップのために計算練習を一カ月間重点的にやらせたが、成果が一向に上がらない。どうしてかと踏み込んで観察してみると、計算自体は十分に速いものの、慎重な性格ゆえに必要以上に確認に時間を取ってしまっていることがわかった――。
これは「計算の速度が遅い」という現実を、講師が正確に評価できなかったことに起因する失敗例です。はじめから生徒の計算速度を把握していれば、受験生の貴重な一ヶ月間を無駄にすることはなかったはずです。
極端にいえば、「教え方のうまい講師」とは「生徒のことをよく見ている講師」です。
「教え方」というと指導知識・指導技術のことばかり意識しがちです。しかし、それ以上に生徒の理解度・特性・状態を自らの観察と客観的なデータの両面から正しく把握できることが重要です。
3.塾講師の指導力を育て、難関校合格につなげる5つのデータ活用
講師の受験指導力を高めるためには定量可能なデータが重要なことは言うまでもありません。その上で、定性的なデータに通じることも重要です。
なぜなら、過去の生徒の合格体験記といった定性データは、「こうすれば生徒を伸ばせる」という指導知識を育む上で重要なアイデアを提供してくれるからです。
- 定量的なデータ:生徒の状況を正確に評価する
- 定性的なデータ:指導知識・指導技術を高める
この2つのデータを両輪で活用することが、講師育成の肝になると考えています。
以下、弊塾で行っている難関校への合格力を高めるための取り組みとして、5つのデータ活用の実践例を紹介します。
そのまま真似していただける内容もあれば、教室や教科によって事情が異なることもあります。参考事例としてご覧いただきながら、ぜひご自身の塾でのデータ活用について考えを深めるきっかけとなれば幸いです。
4.定量的なデータの活用
定量的なデータは、主に生徒の状況を正しく客観的に把握するために必要なデータとなります。
①模擬試験成績データ
参画している模擬試験によっては、成績管理システムがあり、過去の成績を保存してくれる場合があります。しかし、年数が3年などと限定されている場合が多いので、Excelやスプレッドシートなどで独自のデータを持っておくことをお勧めします。
独自のデータがあれば多年度に渡り、テストの種類や教科でソートをかけることができます。教科ごとに志望校のラインに到達しているのか否かが具体的に分かります。
また、年数を重ねていくと、自塾の強みがどの教科にあり、同時に弱点も浮かび上がります。感覚ではなく、採用のポイントも明確になるというわけです。「強いと思っていたけれど」「弱いと思っていたけれど」というのは意外とあるものです。感情を排除して数字と向き合いましょう。
②問題ごとの正誤データ
テキストの問題全ての正誤データを残すことは難しいと思いますが、毎年必ず実施する(少なくとも10年程度は実施する)プリントがあるのであれば、「〇」「×」「空欄」の3種類で正誤データを残しておくと便利です。
正答率ももちろん大切ですが、「空欄」の率を出しておくと間違いに対しての耐性を計れます。
「空欄」率のデータは何かと役立ちます。たとえば、ご家庭や本人と志望校を相談する際にデータを持ち出し、性格を勘案して進学校ではなく附属校を促す、空欄率が高いことを数値で見せて行動変容を促すなど、様々な用途に使えます。
「〇」「×」「空欄」のデータも年度をまたいで比較することができるので、模擬試験成績と同様に過去の合格者と比べることが可能です。月に1回の瞬間風速のデータだけではなく、通常授業時のデータも併せてあると自身の判断に自信を持てるのではないでしょうか。
③過去問の点数データ
入試直前期に実施する志望校の過去問の点数データに関しても収集しておきましょう。
生徒一人あたり、併願校も含めると3校以上の過去問を演習することが多いかと思います。全てを収集することは非常に骨の折れる作業です。得点の提出曜日や日程を固定するなど、回収の工夫をすることで解決しましょう。
上記は手入力をするタイプのシートです。
現在はchatGPTを活用して、簡単に関数やマクロを組むことができます。今まで現場でアナログ管理していたもののほとんどが、ヒューマンエラーなしで解決されました。
ただ動けば良い管理シートであれば、自在に作れて、作業工数がかなり減ります。ぜひ作成にチャレンジしてみて下さい。
※かつては吸い上げることが面倒であった「演習日」は、入力シートと出力シートを分けることで時系列処理がされるように仕組み化可能。確認が面倒であった「合格最低点」などもデータベースを他のシートに作ることで自動吸い上げを実現。
5.定性的なデータの活用
定性的なデータは、過去の成功例・失敗例から知見を引き出し、生徒を迷いなく導くために必要なデータとなります。
①塾講師の合格体験記
生徒やご家庭が書いた合格体験記は数多存在しますが、我々塾講師側の視点で記されたものはあまりないのではないでしょうか。大々的に表に出すものではありませんので、それぞれの学習塾で内部資料として保管されている場合もあるかもしれません。
成績データなどは別で収集しているので、数値的なことを細かく書く必要はありません。思い出を整理する気持ちで一人一人書いてみましょう。自身がどのような戦略で個別最適化したのかが明確化されます。
②入試終了後のヒアリング
入試終了後は各家庭に対して、学習・生活習慣・学習空間・幼少期の過ごし方などをヒアリングしてみましょう。ご家庭の今までの教育に関することを振り返って頂くことで、学習塾としてもヒントになります。
ご家庭によっては、かなり詳細にご回答頂けることがあります。以下はスライドにまとめたものです。
6.LTVは経営力の「幹」
最後にまとめとして、経営者の視点から今回の話を総括したいと思います。
過去の記事では、学習塾の創業期は「成約率⇒LTV(顧客生涯価値)⇒集客」の順に課題を乗り越える必要があると指摘しました。
参考記事:体験授業や問い合わせからの成約率70%!塾の創業を軌道に乗せる方法
塾の経営にとって、成約率が「根」だとすれば、LTVは「幹」です。
過去の記事で紹介したような考え方で無料体験からの成約率を高めることができたならば、次にやるべきことはLTVを高める手を打つこと。平たく言うと、指導で結果を出し、通って頂いているご家庭の満足度を向上させるということです。腕の見せ所ですね!
今回ご紹介したデータ活用の事例を参考に、ぜひそれぞれの塾にあったベストな方法を見つけてみてください。
きっと、生徒やご家庭のお悩みや解決策を立体的に捉えることができるようになり、多角的な指導・提案が可能になります。その積み重ねが、高い合格実績と毎年の継続につながります。結果を出し続けることは外部集客の成功はもちろんのこと、講師や学生スタッフのモチベーションを高めることにもなり、強力な内部掌握にもつながります。
学習塾の経営課題の解決の一歩目は成約率の改善、次にLTVの向上です。
本記事が読者のみなさまの経営に少しでも貢献すれば幸いです。
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