体験授業や問い合わせからの成約率70%!塾の創業を軌道に乗せる方法

学習塾の創業期は、『成約率⇒LTV(顧客生涯価値)⇒集客』の順に課題を乗り越える施策を展開する必要があります

「まずは生徒数を増やさないと!」と息巻いて闇雲な集客に走ってしまうと、自身がイメージしていた顧客層を意図的に集めることは決してできません。

創業期、今回ご紹介することに取り組むことで弊塾では70%超える高い成約率を実現しました。学習塾の開塾一年目から現在に至るまで、黒字経営を続けることができています。

そこで今回は、体験授業や体験教室、問い合わせからの「圧倒的な成約率」を弾き出すために集客をはじめる前に取り組むべきことについてお話します。

“高い成約率”が経営を安定させる

指導方針を決め、塾の内装工事が終わり、必要な教材と講師を揃えたならば、さあいよいよ集客だ…と考えたくなります。しかし、学習塾の創業期には集客よりも前に取り組むべき重要な課題があります。それは「成約率を上げる」ということです。

成約率とは、「問い合わせや無料体験から契約に至るご家庭の割合」のこと。この成約率を高める準備を徹底してから集客に取り組むことが、創業期の最初の関所といえます。

例えば、仮に塾の最低限の経営のために生徒数が30人必要だったとします。成約率30%の塾なら100人の問い合わせが必要ですが、80%の塾なら38人の問い合わせがあれば事足ります。対応するご家庭の数が2倍、3倍と違えば、無料体験や面談、クロージングにかかる労力はそれ以上に大きくなります。

学習塾経営をスマートに軌道に乗せるには、“高い成約率”を実現することが何よりも重要なのです。

顧客(保護者)の認知をパターン別に整理する

では、何をすれば”高い成約率”を実現することができるのでしょうか。

実際に弊塾で取り組んだ方法をご紹介します。

創業時の弊塾では、習い事講座のチラシをポスティングし、無料体験に集客してからクロージングしていました。

「その程度ならうちでもやってるよ」と思ったかもしれません。

しかし、弊塾では、体験申込者から“圧倒的な成約率”を弾き出すために、事前に顧客(保護者)の認知をパターン化して対策を準備していました

まず、保護者の方の性格特性として直感型熟慮型を想定しました。

保護者の分類

無料体験時のお子様の様子から通わせるか否かが決められる直感型の保護者と、周囲の評判や他塾との比較といったさまざまな事情を考慮しながら時間をかけて決めたい熟慮型の保護者とでは、当然、塾側のあるべき対応も違います。

また、無料体験後に抱く印象として、下記の3パターンが考えられます。

  • 「我が子に合うと感じた」
  • 「我が子には合わないと感じた」
  • 「わからない、迷っている」

特に「わからない、迷っている」という保護者の気持ちを契約に近づけるには、入念な準備が必要です。

そこで、直感型・熟慮型の2軸からマトリクスをつくり、無料体験後の保護者の認知を6つのパターンに分類しました。

ターゲットの分類
  • ① 直感行動型×体験をして合うと感じた
  • ② 熟考分析型×体験をして合うと感じた
  • ③ 直感行動型×体験をして悩んでいる
  • ④ 熟考分析型×体験をして悩んでいる
  • ⑤ 直感行動型×体験をして合わないと感じた
  • ⑥ 熟考分析型×体験をして合わないと感じた

そして、パターン別にKFS(重要成功要因:「この場合、どのように対応するのが得策か」)を考え、そのために必要な準備物やアプローチの仕方を検討しました。

パターン別のKFS(重要成功要因)

パターン別KSF
  • ① 直感行動型×体験をして合うと感じたパターンのKFSは「申し込みの簡単・明瞭さ」
  • ② 熟考分析型×体験をして合うと感じたパターンのKFSは対面での阻害要因排除
  • ③ 直感行動型×体験をして悩んでいるパターンのKFSはウォンツを高める即時の情報提供(「今だけ入会金無料」など)
  • ④ 熟考分析型×体験をして悩んでいるパターンのKFSは対面での時間をかけた面談
  • ⑤ 直感行動型×体験をして合わないと感じたパターンのKFSは非対面での簡潔な面談
  • ⑥ 熟考分析型×体験をして合わないと感じたパターンのKFSはニーズを高める継続的な情報提供

次に、得られたマトリクスを見ながら、「現在不足している要素はないか」「必要な準備物にヌケモレはないか」を検討します。

パターン別 戦術ラインナップ

あらゆる顧客のあらゆる反応を想定しながら、いつでも即座に適切な対応がとれるように準備を進めました。

次の内容は、弊塾が実際に取り組んだ戦術と施策の一例です。

【戦術】申し込み作業の簡略化

対象は①の直感行動型×体験をして合うと感じたパターンです。

  • 明朗な申し込みフォーマットを用意する
  • 明朗な料金体系にする
  • 多様な支払い方法(口座振替・クレジットカード決済・月謝袋 等)を用意する

などが有効でした。

【戦術】面談の機会の最大活用

対象は②の熟考分析型×体験をして合うと感じたパターン、④の熟考分析型×体験をして悩んでいるパターン、⑤の直感行動型×体験をして合わないと感じたパターンです。

  • 顧客が合うと感じた理由の言語化を促す
  • 対面で「何をお悩みでしょうか?」と聞いて、その場で解決策を提示する
  • 環境や時間を変えてお話をする機会をつくる(電話・メール・後日面談 等)

などが有効でした。

【戦術】ニーズやウォンツを高める資料の作成

対象は③の直感行動型×体験をして悩んでいるパターン、⑥の熟考分析型×体験をして合わないと感じたパターンです。

  • 体験参加者向けの特別資料配布の作成
  • FAQの作成
  • 生徒の特性分析の作成(事後配布)
  • SNSやメールマガジン、別商材の案内

などが有効でした。

ここで大切なのは、お客様の視点からあるべき塾の対応を考えること

せっかく子どもがやる気で保護者としてもぜひ通わせたいと思っているのに、説明がダラダラと長かったり、手続きが煩雑だったりしたら熱も冷めてしまいますよね。逆に、まだ通わせるべきかどうか悩んでいるのに、「お申込みは簡単ですよ」と契約を促されるのも違います。

顧客の認知をパターン分析し、「こういうお客様にはこう対応しよう」と予め決め、そのための万全の準備をしておくことが、高い成約率を実現するための秘訣です。

ここまで準備をしたら、あとはどのような生徒・保護者が来ても安心です。

6つのタイプのどこに当てはまるのかを見極め、戦術に基いた具体的な行動に移していきましょう

出たとこ勝負で乗り切ろうとするのは愚の骨頂。皆様も経験があるように、体験当日を落ち着いた気持ちで迎えることで、生徒や保護者の細かい感情の機微まで読み取れるというものです。

さらに成約率を高めるために

さらに成約率を高めるために、以下のようなことも心がけてみるとよいでしょう。

  • お電話などで当日までに保護者の方とコミュニケーションを取る
  • お子さんの名前を褒めるなど、教育の話に繋がるアイスブレイクを準備する

当日までに保護者とコミュニケーションを取る

また、事前のお電話は、電話口から漏れ出てくる親御さんの雰囲気や言葉に注意を払いましょう。事前にタイプを予測することができ、アプローチ方法をイメージに繋がります。

加えて、下記のような半歩踏み込んだ会話をしておきましょう。

  • 「お子様はお父様・お母様から見てどんな性格ですか?」
  • 「中学受験(高校受験)をイメージされているのでしょうか?」

体験当日は「こんな一面もありましたよ!」「ご希望されていた○○中学校はお子様のイメージにぴったりですね!」とさらに話を膨らませることができます。

アイスブレイクを準備する

体験当日のご挨拶のタイミングでは、お子さんの名前に興味を持って話をしてみることをお勧めします。

なぜなら、名前は親御さんが読み方や漢字に願いを込めたものだからです。

「凄く良い名前ですね」「素敵な名前ですね」と褒められると言い表せない嬉しさがあります。いきなり本題に移るのではなく、鉄板のアイスブレイクを一つ準備しておきましょう。

互いに和やかな雰囲気でご家庭の教育方針を伺えて、お子さんの将来のことを共に考えることができます。

「この講座のウリは~だから」と、塾側の視点で考えることはもちろんです。しかし、それ以上に実際に足を運んでくださったお子さん・親御さんの気持ちに寄り添いながら、適切な道にリードしていきましょう。

最後に、繰り返しとなりますが、最も大切なのはお客様の視点で考え抜くことです

本記事が創業期を乗り切る一助となれば幸いです。

editこの記事を書いた人

竹山 隼矢
Junya Takeyama

首都圏大手進学塾で東京都内全域の中学受験責任者を務めたのち、地元である京都にて難関指導専門マイクロスクール『イデアスポット』を設立。首都圏・関西圏の中学入試エキスパート講師として、御三家・灘をはじめとした最難関校の合格者を毎年輩出。教鞭を執る傍ら、日系大手企業の教育領域におけるコンサルタントとしても活動し、そのノウハウを教室運営にも活かしている。

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