学習塾の集客できるキャッチコピーのつくり方
2024年9月26日 | お役立ち情報
どれだけ塾の指導力を高めても、肝心の顧客がいなければビジネスとして成り立ちません。
手厚い指導が好評で保護者からの信頼も厚い塾であっても、集客に苦戦し経営はいつもギリギリ…といったケースがあとを絶ちません。むしろ、生徒第一、まじめで教育熱心な塾であるほど集客に苦労していると言っても過言ではありません。それだけ、教育と集客は別物なのです。
今回の記事では、「指導力には自信があるが、集客には苦戦している」という塾経営者の方を対象に、チラシやWebサイトに掲載するキャッチコピーのつくり方を解説します。小手先のテクニックやどこかから借りてきた事例集ではなく、一生使えるマーケティングの思考法を学習塾向けにお伝えします。集客のヒントになれば幸いです。
もくじ
学習塾のキャッチコピーをつくる手順
チラシやWebサイトを発注する際、デザインはプロに任せることができますが、盛り込む内容は塾経営者が決めなければいけません。コピーライティングレベルで提案してくれるマーケティングに長けたデザイナーさんもいるかもしれませんが、顧客のリアルなお悩みを理解し、売上に責任をもって判断できるのは経営者ただ一人でしょう。
では、塾経営者はどのようにチラシやWebサイトのキャッチコピーを考えるのでしょうか。大きな流れは以下の通りです。
集客できるキャッチコピーをつくる3ステップ
- “顧客ニーズ”を言語化する【Step1】
- “伝える内容”を考える【Step2】
- “キャッチコピー”をつくる【Step3】
3つのステップで最も重要なものは1つ目の“顧客ニーズ”の言語化です。なぜなら、「集客できるキャッチコピーは顧客理解なくしてつくれない」からです。
では、“顧客ニーズ”の言語化について考えていきましょう。
- “顧客ニーズ”が理解できているのはどういう状態か
- どうやって“顧客ニーズ”を言語化するのか
重要なプロセスですので、ここに最もボリュームを割いています。顧客ニーズの捉え方がわかったら、3ステップの後半2つを解説します。
- “伝える内容”はどうやって考えるのか【Step2】
- “キャッチコピー”はどうやってつくるのか【Step3】
ぜひ、ご自身の塾の事情にあわせて実践していただければと思います。
“顧客のニーズに応えること”がマーケティングの本質
効果的なキャッチコピーをつくるために、少しだけマーケティングの話をします。マーケティング(ここでは「集客」とほぼ同義で捉えていただいて構いません)を成功させるために最も重要なことは、“顧客のニーズに応えること”です。
マーケティングに長けた塾経営者は、必ず下記を把握しています。
- 自塾の顧客が「なぜ他にもたくさんある塾の中でうちを選んでくれたのか」
- 自塾の顧客が「何に満足し、何に不満を抱えているのか」
顧客ニーズの的確な理解は、キャッチコピーの良し悪しや、判断精度に直結します。
塾経営者が「うちの顧客は指導力の高さを評価して来てくれている」と思っていても、顧客の本音は「近くて安くて指導もそこそこ」だであったりします。塾経営者と顧客の本音にギャップを抱えたままチラシやWebサイトを高級路線に振り切り価格帯を上げたりすると、悲惨な未来に一直線です。顧客の本音とのズレが生じると、集客に悪影響を及ぼします。
【ケーススタディ】最も効果的なキャッチコピーとは
顧客理解の重要性について、具体例で考えてみましょう。あなたが家族と一緒に買い物をしているとき、子どもが「トイレに行きたい」と言い出しました。どうやら急ぎの様子なので早くトイレに連れていきたいが、いかんせん初めて来たショッピングモールなのでトイレの位置がわからない――。
こんなあなたにいま最も効果的なキャッチコピーは何でしょうか? それは下記のような館内サインです。
「トイレ→」
あなたの最もほしい情報は「最寄りのトイレはどこにあるのか?」だからです。「子ども用トイレあり」と書かれていればなお良いかもしれませんが、「トイレ→」で十分です。
キャッチコピーにキャッチーな表現は必要か
キャッチコピーというと、「おっ」と思わせる気が利いた表現であるべきと思っている人も多いのではないでしょうか。ターゲットとする顧客のニーズに応えていれば、キャッチーな表現は必ずしも必要ではありません。
「『お父さん、トイレ!』子どもの急なリクエストにも慌てない、最寄りのトイレはこちら」は、表現に工夫が見られますが、いち早くトイレを見つけたいと状況においては明らかに冗長です。
また、「除菌率99.99%。圧倒的清潔さを誇る高品質トイレはこちら」には余計な情報が含まれています。そもそもショッピングモールのトイレはどこも一定以上の清潔さが担保されていますし、文字数が多すぎてそもそもトイレのサインであることが認識できず、スルーされてしまうかもしれません。
顧客ニーズが理解できると、「どれが最もよいキャッチコピーか」が正しく判断できるようになります。身近な例で考えれば明らかでも、いざ自塾の広告をつくるというとき、私たちは顧客のニーズに応えているでしょうか。的はずれなメッセージを書いてしまってはいないでしょうか。
まずは顧客のニーズを正しく理解すること。自塾が顧客に選ばれる理由を理解し、どうなると他塾に流れてしまうのかを、保護者一人ひとりについてきちんと言葉で説明できるようになる。これが、経営者が目指すべき状態です。
では、顧客ニーズを見つけるには、どうしたらよいでしょうか?
自塾の“顧客ニーズ”が見つかる「ペルソナ分析」の実践
顧客ニーズを見つけるための手法が「ペルソナ分析」です。ペルソナ分析は、まずターゲット顧客を代表する人物をペルソナ(商品やサービスを利用している典型的なユーザー像)として設定します。そして、ペルソナに関する情報を整理、深掘りすることで顧客のニーズを明らかにするマーケティングの分析手法です。
学習塾向けペルソナ分析の手順
- 実在する人物から1人、ペルソナとする人を選ぶ
- ペルソナについて知っていることをすべて書き出す
- ペルソナの立場から「近隣塾の魅力度ランキング」をつくる
- 順位の理由を言語化する
学習塾のマーケティングは、この順番で進めていくとよいでしょう。最終的に得られた魅力度ランキングの理由には、ペルソナのニーズが顕著に現れているはずです。
「ペルソナ分析」実践のコツ
1.実在する人物から1人、ペルソナとする人を選ぶ
ペルソナ分析というと、架空の人物像を設定する方法をしばしば目にします。架空の人物を想定することが悪いとはいいませんが、どうしても「理想の顧客像」つまり「自塾にとって都合のいい保護者」を考えてしまいがちであることには注意が必要です。キャッチコピーの効果をチェックする際、評価が甘くなってしまっては意味がありません。
実在する人物を想定すると、自塾への不満や厳しい目を向けているところもリアルに考えることができます。実際の顧客であれば、分析内容が当たっているか確認できます。取り組む際はぜひ、現実のお客様をペルソナに設定してみてください。
2.ペルソナについて知っていることをすべて書き出す
ペルソナのニーズを把握する上で、生徒の氏名・年齢・成績はもちろん、保護者であるご両親のお名前やお住まい、ご職業や学歴などは重要な情報です。信頼関係を重ね、日々の送迎や保護者面談などあらゆる機会を活用して少しずつ情報収集を進めましょう。
把握している情報は、頭の整理も兼ねてもれなく書き出すことをおすすめしますが、重要な情報とそうでない情報は意識します。あえて生々しい例をあげれば、「ご主人より奥様の方が年上で、学歴も上」という情報は、「ご主人の趣味はランニングとコーヒー」という情報よりも、学習塾経営者にとってはずっと重要です。
書き出された情報のうち、学習塾の評価に関連が強そうなものはどれだろうかと考えてみましょう。
3.ペルソナの立場から「近隣塾の魅力度ランキング」をつくる
ペルソナの情報を一通り整理したら、その情報を使って「近隣塾の魅力度ランキング」をつくりましょう。主要な競合塾と比べて自塾がどの位置にあるのか、改めて考えてみます。
これは実際にやってみるとわかるのですが、ペルソナが現塾生の保護者の場合でも自塾が1位でない場合があります。「もともとは1位だったが、徐々に評価が下がっている」というケースもあれば、「事情により1位の塾に入れなかった」ということもあります。
大切なのは、すでに整理した情報に照らして「この人ならこういう順位で考えているはずだ」と思える順位を決めることです。
4.順位の理由を言語化する
手順の③と④で分けていますが、実際は順位と理由は同時に考えていることでしょう。物事の順位は、何らかの指標や観点に照らして優劣をつけているからです。順位付けをしていく中で、「この人にとって重要なのは◯◯だ」という何かが見えてきているはずです。
「受験の成功」が最重要という保護者は少なくないですが、ペルソナ分析で解像度が上がると「後悔のない受験ができる」が本音ではないかと思い至るかもしれません。この場合は、「受験の成功」も「後悔のない受験」もどちらもペルソナのニーズです。ただ、「受験の成功」はペルソナ本人も明確に意識している顕在ニーズ、「後悔のない受験」は本人も意識していない潜在ニーズと捉えるべきです。
ここまでが1つ目のステップ「顧客のニーズを理解する」でした。
顧客ニーズに応える“メッセージ”を考える
ここからは2つ目のステップ「“伝える内容”」を考えていきます。この段階で意識してほしいのは、「“顧客のニーズ”と“伝える内容”は違う」という関係です。
たとえば、ショッピングモールと学習塾の場合で顧客のニーズと伝える内容を考えてみましょう。
・ショッピングモールの場合
顧客のニーズ : 子どもをトイレに連れていきたい
伝える内容 : 最寄りのトイレの場所
・学習塾の場合
顧客のニーズ : うちの子を第一志望の◯◯高校に受からせたい
伝える内容 :当塾は◯◯高校受験の指導力が高い
なぜ意識する必要があるのかというと、顧客ニーズと伝える内容は別であるとわかっていないと、顧客ニーズをそのまま言語化したタイプのキャッチコピーしか書けなくなるからです。
“顧客のニーズ”と“伝える内容”は別物で、一致することはありません。
学習塾の広告では、「◯◯高校合格を目指すあなたへ」や「〇〇高校合格率90%」といったキャッチコピーをよく目にします。これらは確かに有効なキャッチコピーですが、「うちの子を第一志望の◯◯高校に受からせたい」というニーズに応えるキャッチコピーはもっと幅広く考えられます。
“伝える内容”を幅広く吟味する
たとえば、◯◯高校がその県の難関公立高校であるなら、顧客のニーズ は「うちの子を第一志望の◯◯高校に受からせたい」です。伝える内容は「当塾は県内の難関公立高校出身の講師が多数在籍している」ですね。
これをキャッチコピーに変換すると「難関公立高校出身の講師、多数在籍」という表現になります。チラシであれば、実際の講師の写真を出身校とともに並べるビジュアルがイメージできますね。
もう一つ例を見てみましょう。先ほどのペルソナのように顕在ニーズと潜在ニーズがある場合です。顕在ニーズは「うちの子を第一志望の◯◯高校に受からせたい」、潜在ニーズが「後悔のない受験をさせたい」という場合は、下記のようになります。
顧客のニーズ : うちの子を第一志望の◯◯高校に受からせたい(後悔のない受験をさせたい)
伝える内容 : 当塾はご家庭を志望校選択で後悔させないために徹底的に向き合う
キャッチコピーは「後悔しない志望校選びを全力サポート」となります。
チラシでは、偏差値だけで受験校を選ぶ弊害を語ったり、実際に志望校選びに悩んだご家庭が自塾で成功を収めたケースを紹介したり、といった展開が考えられます。
顧客のニーズがつかめてきたら、「このニーズの顧客には何を伝えればよいだろうか?」と考えましょう。“伝える内容”の案がいろいろな角度から出せることに気づきます。すると、いきなりキャッチコピーを考える場合よりもずっと多くの優れた案が出せるはずです。
実は簡単!学習塾の“キャッチコピー”のつくり方
“顧客のニーズ”を特定し、“伝える内容”を考える。ここまでできれば、最後のステップ「“キャッチコピー”を考える」は決して難しくありません。先ほどは「“顧客のニーズ”と“伝える内容”は違う」とお伝えしましたが、これに対比する形で言えば、「“伝える内容”と“キャッチコピー”はほぼ同じでよい」と覚えておきましょう。
前述の2つのキャッチコピー例をもう一度見てください。
伝える内容 : 当塾は県内の難関公立高校出身の講師が多数在籍している
キャッチコピー : 難関公立高校出身の講師、多数在籍
伝える内容 : 当塾はご家庭を志望校選択で後悔させないために徹底的に向き合う
キャッチコピー : 後悔しない志望校選びを全力サポート
“伝える内容”と“キャッチコピー”はかなり近い表現になっています。
「キャッチコピーは奇をてらった表現でなければいけない」と思う方も多いようですが、ビジネスの現場で結果を出すのは上記のようなキャッチコピーです。もちろん、魅力的な表現にこだわって趣向を凝らすのは構いませんが、あれこれ考えすぎた結果、一読して意味が通らないゴテゴテした表現になることだけは避けましょう。
“伝える内容”を上手く設定できれば、キャッチコピーをつくるのは難しくありません。むしろ、“顧客のニーズ”を理解することの方がずっと難しいのです。
顧客のニーズに応えるキャッチコピーで集客に強い塾経営を!
長い記事になりましたが、マーケティングの基礎的な考え方を学習塾の経営者が実践できるように丁寧に解説したつもりです。特に「ペルソナ分析」の項目で紹介したランキング付けは、ぜひ一度時間を取って丁寧に取り組んでいただければと思っています。
また、「学習塾 キャッチコピー」「学習塾 集客」などで検索するといろいろなノウハウがヒットします。すでにある情報とは重複しないところを解説したつもりですので、他の情報からの学びも活かしながら取り組んでいただくと相乗効果があるはずです。
記事の前半では、「マーケティングの本質は“顧客のニーズに応えること”」とお伝えしました。今回は顧客ニーズの理解をキャッチコピーに活かすというテーマでしたが、新規の講座開発や保護者面談のストーリーづくりなど、顧客ニーズの深い理解はあらゆるところに効いてきます。
自分たちの顧客はなぜ、何を求めているのか。
簡単な問いですが、これを理解することが塾経営の永遠の課題であると心得て、集客に強い安定した塾経営を実現しましょう。
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