少子化で伸びる塾、潰れる塾 数字で見る学習塾市場の二極化
2026年3月25日 | お役立ち情報
学習塾を経営していると、どうしても気になるのは競合塾の動向です。
「最近駅前にできた新しい塾、評判がいいらしいね」
「大手の○○は生徒数を伸ばしているようだ」
2025年は、前年の出生数がはじめて70万人を割り込んだことが大きなニュースとなりました。確かに、以前に比べて生徒を集めるのは難しくなったものの、その一方で、学習塾の数自体は増えているような気もする。そんな実感をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
そこで今回の記事では、少子化が叫ばれる昨今、学習塾市場は本当のところどのようになっているのか、これからの時代は何を考えて経営すればよいのか、さまざまなデータを見ながら学習塾のこれからを考察していきたいと思います。
もくじ
1.2つのデータ、どちらが正解?――学習塾は伸びているのか
学習塾市場の推移というと、私たちが入手可能なデータには2種類があります。
1つ目は、矢野経済研究所が実施した学習塾・予備校市場に関する調査データです。矢野経済によると、2020年度の学習塾・予備校の市場規模は9,240億円でした。同社によると、2003年は9,750億円だった市場は2009年には9,000億円にまで落ち込んだものの、その後上下を繰り返しているとのこと。
【出典】学習塾・予備校市場に関する調査を実施(2021年)(矢野経済研究所)など
https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/2783
大きく捉えれば、学習塾の市場規模は過去20年間9000億円台で横ばいであるといえます。

2つ目のデータは、経済産業省が実施した特定サービス産業動態調査から、学習塾市場を抜き出したものです。こちらは先程とは変わり、過去20年間で3000億円から6000億円へと成長を続けているというデータになっています。

2つの異なる市場調査。結果は規模も傾向も大きく異なっていますが、これは一体どういうことでしょうか?あなたはどちらのデータが学習塾市場の実態を表していると考えますか?

2.学習塾の売上推移と相次ぐ倒産・休廃業の実態
この2つのデータを読み解くにあたり、助けとなる別のデータを見てみましょう。
次は、帝国データバンクによる学習塾の規模別損益の動向です。学習塾を売上高50億円以上の塾(=ここでは「大手塾」)と、5億円未満の塾(=「中小塾」)に分け、それぞれの赤字・黒字の状況を整理したところ、なんと大手塾は約6%が赤字であるのに対し、中小塾は約40%が赤字であるという結果になっています。
【出典】「学習塾」の倒産動向(2025年、速報)(帝国データバンク)
https://www.tdb.co.jp/report/industry/20260104_gakusyu25y/
いまの学習塾は大手が圧倒的に優位となり、地域の中小塾は苦戦を強いられているというのが実態のようです。

このことを別の角度から裏付けるデータがあります。
東京商工リサーチが実施した、学習塾の倒産や休廃業・解散、そして新設の推移をまとめたデータによると、学習塾の倒産や休廃業・解散は過去10年間増加傾向にあり、直近年度はいずれも過去最高を記録しています。
先程のデータと組み合わせて考えると、赤字続きの中小塾がどんどん倒産に追い込まれている様子が目に浮かびます。
要するに、「大手塾は黒字、中小塾は苦戦」という二極化の構図がすっかり出来上がり、それが年々加速しているのが現在の学習塾市場ということです。この記事を読まれている方の多くは中小規模の塾で働く方でしょうから、年々経営環境が厳しくなっている実感がおありかもしれません。
3.2つのデータが語る真実
さて、冒頭で示した2つの調査結果について、答え合わせに移ります。
実は、冒頭に示した2つのデータには以下の特性があります。
- ①矢野経済研究所 : 対象は学習塾市場「全体」
- ②特定サービス産業動態調査(経済産業省) : 対象は学習塾市場の「上位7割」
経産省の②の調査は、もともと市場の「動向」、すなわち拡大・縮小・停滞の動きを把握することが狙いです。正確な市場規模の算出をそもそも目的にしておらず、大雑把に市場の上位7割のみを対象に調査しています。
つまり、②のグラフが右肩上がりに伸びていたのは、「市場の上位7割を占める大規模塾は大きく伸びている」ということを表しているのです。

ということで、ここまでの内容をまとめると
- 学習塾市場全体は、過去20年間にわたり9000億円台で横ばい
- 大手塾を中心とした市場の上位7割は20年間で2倍に成長
- 中小・個人塾は4割が赤字。倒産件数は年々増加し、直近年度は過去最高を記録
塾の規模によって市場が二極化し、その差は年々大きくなっている。地域の中小塾は淘汰され、大手塾が勢力を拡大している。これが現在の学習塾市場の全体像なのです。
4.子どもはどれだけ減ったのか――少子化の実態
学習塾市場は全体としてみると横ばいであることがわかりました。この「市場は横ばい」ということの意味を深掘りしてみましょう。
大きな前提として、日本は急速に少子化が進んでいます。昨年の2025年には、2024年の出生数がついに70万人を切ったということが大きなニュースになりました。70万人と言われても実感がわかないかもしれませんが、出生数の推移のグラフを見るとその変化の大きさがよくわかります。

出生数は2000年以降、直近25年で6割以下に落ち込みました。特に、2015年ころから減少スピードが速くなっているのが印象的です。
学習塾に通う学齢の子どもの数はどうでしょうか。6~18歳の人口を抜き出したグラフが以下のものです。

子どもの数は2000年以降一定したペースで減少しており、2024年は2000年対比で76%にまで減りました。グラフの形を見る限りでは、直近で少子化が加速していることの影響はまだないように見えますが、今後数年で徐々にこの減少ペースが加速していくことでしょう。
ちなみに、少子化のあり方は全国一律ではありません。世代人口を都道府県別に見ることができる総務省統計局の人口推計を見てみましょう。

通塾年齢の子ども(5~19歳)の人口割合を都道府県単位で比較すると、最も子どもの割合が高いのは沖縄県で16.45%、子どもの割合が小さいのが秋田県で10.45%。6ポイントの開きがあることがわかりました。
これは、人口動態通りに各県からそれぞれ100人を抽出すると、沖縄県には子どもが16人、秋田県には子どもが10人いるということ。つまり、同じ人数で比較すると、秋田県は沖縄県の2/3以下しか子どもがいないということになります。
5.「市場は横ばい」ではダメな理由
そして、ここで考えるべき重要な要素が物価です。
近年、物価上昇によってあらゆるモノの価格が急速に高まっています。総務省統計局の消費者物価指数の推移をみてみましょう。

過去20年で消費者物価指数(総合)は17ポイントも上がっています。その動きは2021年以降に加速しており、5年間で12ポイントもの上昇です。
中小塾の場合、塾の利益は事業の内部留保というより、塾長の生活を支える原資そのものになる傾向があります。つまり物価上昇は、「市場の実質規模」だけでなく、「経営者の実質可処分所得」そのものを削っていきます。
同じ月謝、同じ生徒数でも、生活費が上がれば、残る手取りは目に見えて減る。利益の薄い経営ほど、これはすぐに耐えきれない負荷になります。
少子化は加速し、物価上昇も終わりが見えない。経営環境の逆風にどう対応すべきか真剣に策を練るときに来ています。
6.学習塾経営の勝機はどこにあるのか
悲観的なデータが多くなってしまいましたが、学習塾経営にとって追い風となるデータも紹介します。
文部科学省が実施する子供の学習費調査を見ると、公立・私立の小中高校すべてのセグメントで、子ども一人にかける学習塾費は増加傾向にあることがわかります。

これが「子どもは減っても市場は横ばい」の実態です。少子化もあいまって、子ども一人ひとりにしっかりと教育を施したいという保護者の思いが見て取れます。ここが勝機の1つ目です。
2つ目の勝機は、地域ごとに異なる学習塾ニーズの変化です。
わかりやすい事例として、首都圏の中学受験ニーズを見てみましょう。東京都が発行する令和7年度 公立学校統計調査報告書によると、都内の私立中学の進学率は上昇傾向にあり、直近年度は19.9%となりました。
「都内」と一口に言ってもその様相は大きく異なっています。都内トップは文京区で、私立中学の進学率は48.5%にのぼります。続いて千代田区44.1%、港区41.9%となっており、いずれも東京都全体の平均値からはかけ離れた値です。実際、これらのエリアには中学受験のために年間数百万円という金額を当たり前のように支払う家庭も少なくありません。
こうした特需の様な変化は稀かもしれませんが、「最近は○○高校の倍率が上がってきている」「○○ニュータウンでは子連れ家庭が増えてきているらしい」といったことからも地域のニーズは推測できます。
地道なことではありますが、いつの時代も多方面にアンテナを張り、地域の教育ニーズの変化を逃さないことが重要です。
まとめ 市場の二極化の本質は何か
伸びる大手塾と苦しむ中小塾。横ばいの学習塾市場が、実は二極化していることを取り上げましたが、私はその本質は事業の規模ではないと考えています。
伸びる塾と潰れる塾を分ける本質は、変化への対応力にあるのではないでしょうか。
これは、たくさんのデータを収集し、高度な分析をする――といったことではなく、状況をシンプルに捉え、やることを絞り、やり切る力です。
例えば、以下のようにシンプルに考えて、着実に打ち手を実行することです。
- 子どもは減る
→他塾に勝る「強み」を打ち出し、生徒の獲得競争に勝つ
⇒そのためにどうするか? - 物価は上がる
→「値上げ」を実施し、売上利益を確保する
⇒そのためにどうするか? - 地域の教育ニーズは変化する
→変化にいち早く気づき、対応して勝機を手にする
⇒そのためにどうするか?
規模が大きい大手塾は、こうした課題に人員を割き、着実に手を打っています。新しい講座を打ち出したり、自社でシステムを開発したり、どんどんと新しいことに挑戦します。そのすべてが成功するわけではありませんが、挑戦した分だけ学びがあり、次の成功を掴み取っていきます。
一方、中小塾はどうしても現場を回すことに精一杯になりがちです。この差が、二極化の正体ではないでしょうか。
いま中小塾がやるべきことは、小回りの利く規模を活かして、上記の様な変化に対応することです。
では、具体的に何をするべきか? 次回の記事では、様々な塾の成功事例をもとに中小塾が取りうる変化への対応策をご紹介したいと思います。
関連記事



